N先生ありがとう

去年までお世話になっていた保育園での出来事です。

 

当時夫と別居し、実家に戻った私は保育園探しの真っ最中でした。
年度途中ということでどこにも空きがなく、何とか見つけたのはボロボロで見るからに古そうな認証保育園でした。
ここに決めてよいのかと躊躇する気持ちを抑えて入園の申し込みに行った日、そこで園長に紹介された責任者に度肝を抜かれました。

 

その保育士はN先生という50代くらいの女性でした。
しかし見た目が明らかに保育士には見えません。
金髪のストレートロングヘアに濃い化粧、敬語も使わず、しゃがれた声で喋るので、私にはどう見てもスナックのママにしか見えませんでした。
本当にこんなところに預けて大丈夫かと思いましたが、他にあてはありません。
翌日から午前中のみの慣らし保育がスタートしました。

 

一日目、子供は初めて私と離れて過ごすので大泣きです。
毎日毎日泣かれていると本当に子供に対して申し訳なくなり、私自身が泣けてきました。

 

そんなある日、子供が熱を出したのですが仕事中ですぐには迎えに行けません。
保育園にはすべての事情を話してあったので夕方まで何とか預かってくれていました。
急いで迎えに行くと、帰り際にN先生にちゃんと病院に連れて行ってあげてねと声をかけられました。
親切心で言ってくれたのでしょうが、当時の私は心が荒んでいたので、私が病院にも連れて行かないような親に見えるのかと、ついイラっとしてしまいました。

 

それ以降もN先生は何かと私にいろいろ話しかけてきます。
少し苦手意識を持ち始めましたが、それに反して子供はN先生に日に日になついていきます。
迎えに行くといつもN先生の膝に座り、Nちゃん、Nちゃんと後をついて回っていました。
大きな保育園なので他にも若くて可愛い先生はたくさんいるのですが、家の子はN先生が一番好きなのだそうです。

 

なぜN先生がそんなに良いのかそのときはわかりませんでしたが、通っているうちに理由がわかってきました。
N先生は絶対に感情に任せて怒らないのです。
怒鳴っているところを見たことがありません。
そしていつも子供たちに声をかけていて、遊びにも面倒くさがることなく付き合ってくれていました。
叱るときはきちんと叱り、よくできたお母さんのようです。
私の事情にも対応してくれるN先生に、いつの間にか全幅の信頼を置くようになりました。

 

家の子はあまりにもN先生が好きすぎて、迎えに行った私に、今日はNちゃんのお家にお泊りするから帰らないと言い張って、N先生の家について帰ろうとしたこともありました。
N先生がそこまで可愛がってくれることに感謝しつつも、その時は息子に振られた気分で少し切なくなりました。

 

そんな大好きなN先生ともお別れの日が近づいてきました。
夫と一緒に暮らすことになり、家に帰るのです。
お世話になった先生方にあいさつをして回っていると、Nちゃんに会わなきゃと言って息子が突然走りだしました。
探しに行くと、N先生と息子が園庭に並んで座っていました。
二人とも鼻をすすっています。

 

N先生は、うちの子を本当に可愛く思っていたと言い、寂しいけど、お父さんと一緒に暮らせるのはうれしいと優しく送り出してくれました。
本当によくできた先生で、成長途中の大事な時期にこのような先生に出会えたことに感謝でいっぱいです。